咲いてJewel

──事務所

周子
「おっつー。お、みんな揃ってるー。」


「周子が最後よ。お疲れさま。」

[お疲れ]

周子
「どーもどーも。大物は遅れてやってくるってやつ?」

飛鳥
「この顔ぶれは……何時ぶりか……。ボクらにとっては過去の話だが、誰かにとっては未来の話……。」

周子
「ふ、なにたそがれてんの。」


「この5人で集まるのは、久しぶりね。アルバムレコーディングの打ち上げでいった遊園地以来? みんな元気してた?」

ありす
「私と文香さんは、ユニットで一緒でしたよ。それはもう、クールでかっこいいと評判だったんですから。」

文香
「……ヴァルキュリア、でしたね。評判であったのなら、喜ばしいことです。」

周子
「ふーん。まぁ、それいうたら、うちらだってチュッチュしてたし。ねぇ奏ちゃん?」


「その表現は、いろんな方面に誤解を招くかも。でも、また5人で集まったってことは……『咲いてJewel』かな。お仕事ができるみたいで嬉しいね。」

飛鳥
「……つまり、ボクだけが経験不足……とでも言いたいわけかい。」


「そんなわけないでしょう。ただ……。」

文香
「……飛鳥さん。不安、ですか?」

飛鳥
「そんなわけないだろう。ボクだってアイドルさ。ユニットでの仕事をしたことがないわけじゃない。それにこれは……アドバンテージだ。」

ありす
「アドバンテージ……?」

飛鳥
「不安? 不安というのは未知に対する心理的防御行動だろう。だがユニットでの活動を経たキミたちは経験を力に変えている、ならばつまり不安を感じる必要など無いと証明されているわけで……。」

周子
「はいはい。まぁ、なんかあったらみんながフォローしてくれるって。」

文香
「……微力ながら、お力添えできたらと思います。」

ありす
「私たちが教えてあげますよ。ふふん。」

飛鳥
「それはどうかな。」

ありす
「教えてあげられるのは本当ですっ。」

飛鳥
「くっ……偉そうな口を利くものだ。」


「ほら、子ども同士で喧嘩しないの。」

ありす
「子どもじゃありません!」

飛鳥
「子どもではない!」

文香
「……ふふっ。あ。あ、すみません、今のはそういう意味ではなく……。」


「ふふっ、ほら、文香にも笑われてる。もうこの話はおしまいね。」

周子
「ほんじゃー、よきところってことで、クジでも引きますかー。」

ありす
「クジですか?」

飛鳥
「何の、だい。」

周子
「それはあとでのお楽しみ~♪ この袋の中に、みんなの名前を書いた紙が入ってるってわけ。」

ありす
「何に使われるか分からない物に利用されるのは、気が乗りません。」

飛鳥
「同感だね。確率というのは、信頼できない悪魔だよ。」

周子
「あーはいはいわかったわかった。リーダー役を決めるクジってわけ。ユニットで仕事するんでしょ? リーダー必要じゃない?」

文香
「……リーダー、ですか。立候補制ではないのですね。」


「周子って、意外とそういうの好きよね。じゃあ、それを文香が混ぜて、飛鳥が引くってことでいい?」

周子
「え。」

文香
「わかりました。」

飛鳥
「かまわないよ。」


「ありすちゃん、引きたかった?」

ありす
「べつに……いいですけど。」

周子
「……はぁ。わかったわかった。はい、どうぞ。」

文香
「では、混ぜます。」

飛鳥
「この右手、悪魔の右手となるか、それとも神の右手となるか……。いま、運命は我が手の中に……クックック。みんなの行く末を握っていると思うと、気分が……。」

周子
「いいからはよ引かんかーい。」

飛鳥
「……引いたよ。はい。どれ……『しゅーこちゃん』と、書いてあるようだが?」

文香
「つまり……周子さんが、リーダーということ、ですね。」

周子
「あたしの名前、引く予定なかったんだけどなー……。」


「おあいにくさま。リーダー、本気でやるつもりなかったでしょ。」

周子
「……ふふっ、バレた?」

ありす
「不正はよくありません!」

周子
「いやー、ありすちゃんか飛鳥ちゃんあたりにやってもらえたら、面白いかと思ってたんだけど……。これ、リハってことでもう一回やったりしない?」


「諦めなさい。自由で身軽でいたいのも分かるけど。」

周子
「いやー、苦労すると老けるっていうからさー。シューコちゃんとしては苦労はしたくないわけですよ。」

文香
「……妖狐は何年生きたとしても、変わらないものですよ。」

ありす
「周子さん、狐なんですか?」

周子
「そーよ。こんこん。」


「で……リーダーが決まったとして、あとはユニット名かな。良いアイデアある? 飛鳥、どう? こういうの得意でしょう。」

飛鳥
「フム……。CAERULA、というのはどうかな。みんなにふさわしい。」

周子
「ふーん、よくわかんないけど、今回だけの名前ならいいんじゃない。いい?」


「私は異存ないけど。みんなは?」

ありす
「え、えぇ……。」

文香
「……ラテン語でしたでしょうか。意味は確か……青。私も、よいと思います。」

ありす
「案外、あっさりと決まるんですね……。」

周子
「こういうのは、勢いだから。そんじゃ、CAERULA、いきますかー。」

ありす
「はいっ。」

文香
「はい。」

飛鳥
「うん。」


「えぇ。」

──廊下

周子
「んー、リーダーかー。」

文香
「……どうかなさったのですか、周子さん。」

周子
「リーダー、まさか自分がやることになると思ってなくてさ。これはまずったなーと思って。」

飛鳥
「いいじゃないか。周子さんならできるんじゃないか。能力が無いわけではないだろう。」

周子
「やー、できることとしたいことは違うしね。誰だってそうでしょ。」

文香
「……私も、人前に立つのは苦手ですね。」

周子
「およそアイドルとは思えないコメントいただいたわー。」

飛鳥
「なぜ、リーダーをいやがるんだい?」

周子
「だって、面倒じゃん。」

飛鳥
「……ふっ。偽らないな。」

周子
「気楽でいたいしねー。」

文香
「……どうしても、リーダーのお仕事は増えますね。メンバーに気をつかったり、プロデューサーさんとやりとりしたり、ソレそのものは些細なことでも、負担にはなります。」

周子
「そーそー。でも……まぁ、そろそろちゃんとやれってことだったのかなー。」

飛鳥
「……というと?」

周子
「あたし、リーダーらしくないでしょ。合わないしさ。」

文香
「……人を引きつける力を持っていると、思いますが。」

飛鳥
「アイドルらしさ……いや、ちがうな。あるいは……カリスマ性、とでもいうのだろうか。」

周子
「いやいや。アイドルだって、フラっとなったようなもんだから。レッスンやら現場やらで仕切ったりとか、キャラじゃないんだよねー。みんなもそうでしょ。」

飛鳥
「あぁ……理解るよ。」

文香
「えぇ。私も、同じです。」

周子
「でも、だからこそ、今回は選ばれちゃったのかなーって思って。もう、そういう言い訳してられないっぽいじゃん。シューコの本気が、見たい人もいるんかなーって。」

文香
「プロデューサーさん、ですか。」

周子
「とか……ファンとか? まぁ、いろいろね。」

飛鳥
「ボクも、周子さんのリーダー役、興味あるな。」

周子
「お? 珍しいやん。他人に興味なかったんじゃなかった?」

飛鳥
「いやぁ、素晴らしいよ、リーダー。だから、反面教師にさせてもらおうかと思ってね。」

周子
「あははっ! やーなやつ!」

飛鳥
「ボクらにその責務を押しつけようとしただろう? お互い様さ。」

周子
「フフッ!」

飛鳥
「フフッ。」

文香
「……? お2人とも、仲が良いのですね?」

周子
「さーて、そんじゃレッスンしにいきますか。ダンス覚えなきゃいけないからね!」

──レッスンルーム

飛鳥
「ふぅ……。キツいな。」

周子
「いやー、レッスンってのも真面目にやると大変だねー。自主レッスンとはいえさー。」

飛鳥
「ある程度、踊れるようにならないと、トレーナーから指導も受けられないとはね。」

ありす
「はぁ、はぁ……。し、仕方ありませんよ。トレーナーさんだって、暇なわけではありません。」

周子
「そうだよねー。」

飛鳥
「トレーナーさんたちだって、ずっと待ってるわけじゃない。明日にするのも手だろうな。」

ありす
「でも私たち、まだ踊れるようになってませんよ。それなのに、帰るんですか?」

周子
「うーん。みんな、ダンスちょっと苦手かなー?」

飛鳥
「得意ではない……というのは、苦手に当たるのかな? あるいは、相対的なのか、絶対的なのか……。」

ありす
「言葉遊びしても、上手くなるわけじゃありませんよ。」

飛鳥
「あぁ、正論だね。しかし、もっとインスタントに習得できたら、みんな楽なんだが……。」

ありす
「レッスンは時間をかけないといけないんです。文香さん達はそう言ってました。」

飛鳥
「これはまた正論だね。ただ、余白がない。だったらボクは極論の方が好きだ。」

周子
「んー……帰りになに食べて帰ろっかなー……。2人はー?」

飛鳥
「あるいは周子さんのような……人を煙に巻く態度の方が、優しい。」

ありす
「どういう意味ですか。よく分かりません。」

飛鳥
「正論は正しいが、正しいものは反論を受け付けないだろう。反論を受け付けないということは、それを言われた側は? 言葉を飲み込むしかない。」

ありす
「それがいけないんですか? 正しいんだから、いいんじゃないですか?」

飛鳥
「キミはもっと想像力を働かせた方がいい。ミステリーを読むんだろう? 犯人の名前を探偵が言うまであたりを付けないのかい?」

ありす
「どういう意味ですか!」

周子
「あー。さっきトレーナーさんはさ、言ったじゃん。できるようになるまで、あたしらだけで自主レッスンしろって。できるまで、レッスンしたほうがいいと思う?」

ありす
「当然です! できるまで、やるべきです! 途中で放りだすのは、怠惰な人の悪癖です!」

周子
「ふふっ、あたしは余裕だよ。ぶっちゃけちゃえば、もうざっくり踊れる。飛鳥ちゃんは、まぁ、2~3時間ぐらいやってればできるかな?」

飛鳥
「自己評価と他者評価は違う。こういう場合は、他者の評価の方が正しいだろう。」

周子
「ありすちゃんはさ……べつに、悪いわけじゃないけど、もう体力ないよね。今日だって、昼からずっとやってるんだよ。時間かければできるかもしれないけど、効率は落ちるし。だったらとっとと諦めて、明日また頑張らない? ってのが、飛鳥ちゃんの言葉の裏にあると思ったんだけど。」

ありす
「そんな……!」

飛鳥
「まったく、思考をトレースして読んでくる人は、苦手だ。周子さん然り、奏さん然り……。」

周子
「でも、ありすちゃんの言葉はさ、それを正論で打ち破ろうとしちゃったと思うんだよねー。」

ありす
「そ、そんなことを考えていたんですか?」

飛鳥
「そこまで考えていたわけではないよ。ましてやありす、キミのためなんかじゃない。」

ありす
「でも……。」

飛鳥
「でも、その通りさ。そう……誰もが同じラインに立っているなんて幻想は、ボクらもプロデューサーも持っていない。そんなのはファンだけさ。人には向き不向きがあって、完璧なやつなんていない。数時間のレッスンで踊れてしまう器用な人もいれば、時間をかけてきっちりたたき込んでいく人もいる。まぁ、RPGなんかじゃ、だいたいレベルが上がりやすい早熟なキャラより、晩成型の方が強いんだけどね。」

周子
「そうなん?」

ありす
「……まぁ、そうですね。」

周子
「よーし、2人ともあたしの屍をこえていきたまえー。」

ありす
「これじゃ……私が子どもみたいじゃないですか……!」

周子
「ふふっ、子どもやん。いうて。でも、それが悪いわけじゃないよ。」

飛鳥
「ボクらは年齢という数字の鎖から逃れることは……できないんだ。だから、焦る必要はない。レッスンは明日も明後日もあるんだ。過程は過程さ。最後のステージでできれば、それでいい。」

ありす
「けど……私にだって意地があります! お2人は、どうなんですか?」

周子
「おっと? できるまでやっちゃう?」

飛鳥
「ボクは、できるよ。こう見えて心の底じゃ負けず嫌いなんでね。」

ありす
「じゃあ、やるしかないじゃないですか。倒れても何でも、やるしか。」

周子
「……ふふっ、頑固やね。でも、そういうのも、嫌いじゃない。よし。やろか。」

──数時間後

飛鳥
「ふぅ……いい汗をかいた……けど、いい手応えがあった。ありすは……?」

ありす
「わ、私……晩成型ですから……。」

周子
「んー、やっぱ晩ご飯は餃子にしよっかなー。」

──カフェ

周子
「はぁーーーーーー。」


「開幕早々、ため息が深すぎると思うのだけど。」

文香
「……苦労なさっているのですか、リーダーという役職に。」

周子
「ほーんとこんなめんどくさいと思わなかった……。」


「ほんと面倒でしょう。でも、いいわよね。」

周子
「なーにが、いいわよね、だよー。全然よくないよ。いちいち手間がかかるんだから。」

文香
「そんなに、面倒ですか……? ありすちゃんも飛鳥ちゃんも、素直で聞き分けのよい子たちかと……。」

周子
「文香ちゃん、お人好しすぎ……。あの子ら、それはもーぶつかってばっかりなんだから。」


「でも、だからこそきっといい仲間になると思わない?」

文香
「そうですね。対等に言い合える仲というのは、得がたいもの……。それこそ、宝石のような。」

周子
「けど、それをフォローする側はたまったもんじゃないって。」


「あきらめなさい、リーダーなんだから。これまでサボってきたつけが来たと思えば、ね?」

周子
「やだなー、あたしサボってなんかないって。ま、リーダーとかまとめ役とか、そういうのをうまく避けてたのはほんとだけどね。」

文香
「ならば、きっといま、周子さんも新たな経験をしているのですね。」

周子
「そうかなー。みんなのスケジュール調整したり、レッスンルームで気を配ったり、プロデューサーと連絡取ったり……なかなかねー。でも、全体を引いて見るのって、わりと得意っていうか、慣れてるしさ。面倒な苦労も含めて、楽しんでるよ。」



「あっ、鳴ってるよ。」

周子
「あー……。ちいさな大物達からお呼び出し。行かなきゃ。」


「リーダー、頼られてるじゃない。よかったわね。ふふっ。」

文香
「……息抜きも大事にしながら、頑張ってください。私は、なんのお力添えもできませんが、応援しています。」

周子
「そりゃどうも。ありがとさん。お2人が全く手が掛からない子でよかったよ。」


「あら、わがまま言い出すかもしれないわよ? 文香だって、いろいろこだわりが強い子なんだから。」

文香
「……私は、そのようなことは。」

周子
「ふふふ、分かってる分かってる。それじゃ、レッスンに戻りますわ。ここ、払っとくね~♪」


文香
「さすが、リーダー……。気づかいができる人に、憧れます。


文香 「……。」

奏 「……。」

文香 「……。」

奏 「文香。私は沈黙とコーヒーを一緒に楽しめるタイプだけれど、もしよかったら何を考えているか話してくれない?」

文香 「……あぁ、すみません。考え事をしていました。その、周子さんについて。いえ、みなさんの輝きについて。」

奏 「輝き、ね?」

文香 「えぇ。ありすちゃんや飛鳥ちゃんは互いに切磋琢磨して、周子さんはリーダーという職務で磨かれて、輝きを増しているように思います。」

奏 「そうね。このユニットでのお仕事を通じて、成長しているみたい。」

文香 「……私も、成長しなければ、ならないと思うのです。そうでなければ、みなさんに顔向けできません。」

奏 「……文香って、そういうところ、あるわよね……。」

文香 「……つまり、私が、苦手な部分をどうにかしたら、よいのでは、と。そう、考えました。」

奏 「良い考えね。それから?」

文香 「……一緒についてきていただけませんか。息抜きだと思っていただいて、構いません。私にとっては一大事でも、奏さんにとっては息抜き程度のことです。」

奏 「分かったわ。」


(後略)

(前略)

──控え室前


「私、LIVE前のこの落ち着かない空気、好きなのよね。」

ありす
「なぜですか?」


「なんだか、学園祭みたいじゃない? でも、ああいうのって普段距離を置いてるから。」

ありす
「はぁ……。」

文香
「すこし、分かります。どこか遠いものとして感じていましたが、いまは、自分のこととして感じられます。」

ありす
「そういうものなんですか。」


「あなたは、そうならないようにね。ありすちゃん。」

文香
「えぇ、学園祭を明るく楽しむ、そんな学生生活を送ってください。」

ありす
「えぇ、あ、はい……。なんだか重たいものを背負わされていませんか、私……。」


「そんなことないって♪ ほら、ケータリングがあるわ。本番終わるまでタイミングもないし、何か食べておきましょ。」

文香
「……そういえば、今日はなにも食べていませんでしたね。」

ありす
「いけません! ちゃんと食べましょう! 私、適当に取ってきますから、待っててください!」


「……かわいいわね。ありすちゃん。私も、あんな素直な子どもだったらもっと好かれたかしら?」

文香
「……どのような子でも。」


「ん?」

文香
「どのような子であっても、奏さんは奏さんですから。きっと、好かれていたと思いますよ。少なくとも、私はそう思います。」


「……あなたって、ときたましらふと思えない言葉を吐くわね。」

文香
「……そう、でしたか。」


「……まったく。」

ありす
「あの、ハンバーグとエビフライがあるんです。2人はどっちが好き……。」


「……。」

文香
「……。」

ありす
「こ、この一瞬で、なんで変な空気になってるんですか……? はっ! 喧嘩したんですか……!? 仲良くしてください! 本番前ですよ! むしろ団結しないと!」


「違うって。誤解よ。」

文香
「ち、違いますよ。」

ありす
「わ、私、周子さんを呼んできますから! それ以上何か言い合ったらダメですよ! ダメですからね!」

──LIVE終了後

周子
「いやー、終わっちゃったねー。」

飛鳥
「花火は、いつだって一瞬で火花を散らして消えるものさ。」

周子
「おーおー、風流ですなぁ。」

文香
「でも、その輝きは、見た人の心の中で、永遠に消えない光になります。」

ありす
「そうですね。間違いありません。」


「このユニットも、これで活動が終わるわけだけど……。歌は残り続けるものね。」

飛鳥
「アイドルは、偶像だ。偶像というのは、いつか忘れ去られるものと決まっている。でも、歌は文化だ。だから残り続ける。」


「そう、輝きながら残り続けるのね。」

文香
「Jewelの……宝石のように、ですね。」

ありす
「キラキラしていて、素敵な思い出です。それに……私もそういうものを生み出す側になれて、いま本当に幸せです。」

飛鳥
「憧れていたんだね。ありす。それもまた、あのステージを経てしまったら、納得というものだ。」

ありす
「歌には、力がありますからね。」

周子
「……ほっといたらこのポエム合戦、ずっと続きそうやなー。」


「というわけで、この美しいステージのフィナーレ、リーダーを務めてくれた周子“ちゃん”が感動の挨拶で締めくくるって。」

周子
「え?」

文香
「周子さん、お願いします。」

飛鳥
「あぁ。」

ありす
「はいっ。」

周子
「えーと……参ったな。こういうの、一番苦手なんだけど。なに喋ろっかなー?」


「リーダー役を演じてよ。アイドルでしょ?」

周子
「まったく……仕方ないね。えーと、まずはみんな、ステージ成功、おめでと。」

文香
「おめでとうございます。」

周子
「みんな頑張ってたよね。レッスンも、なんだかんだやってたし。ていうか、真面目だよねみんな。よくやってた。」

飛鳥
「うん。うん。」

ありす
「うん。うん。」

周子
「あと、プロデューサーさん、ありがと。見守って、口出ししないでくれたおかげで、主に飛鳥ありすのAAコンビが成長しましたー。やったね。」

[うなずく]

ありす
「まったく……どういう意味なんでしょうか。」

飛鳥
「皮肉以外の何物でもないようだが。フフッ。」

周子
「実際、あたしらも2人の成長に引っ張られたしさ。それってユニットにとってすごく価値があったと思うわけよ。」

文香
「そうですね。得がたい経験をしたのではないかと思います。」

周子
「あの暗かった文香ちゃんも、なんとなく肌の色が良くなったような気がするし?」


「どんな褒め言葉よ?」

周子
「奏ちゃんにいたっては、リーダー役をやらなくてよくなったおかげでのびのびできました、と。」


「ふふっ、それは否定しない♪」

周子
「それぞれが初めましてだったアルバムレコーディングから考えたら、このイベントで、だいぶ仲良くなったと思うんだよね。アイドルとしてのお互いを、理解できたっていうか、さ。」

ありす
「そうですね。アイドルとして、理解し合えました。」

飛鳥
「あぁ。よく理解できた。」

周子
「あたしも成長できたっていうか、させられたしさ? つまりイベントって、それが目的だったんじゃないかなーって、今でこそ思うんだよね。なんか、そういうのあるじゃん、奏ちゃん?」


「よくある映画のストーリーね。宝を目指して旅立ったけど、仲間との絆が手に入りましたってやつかしら。」

周子
「そーそー。」

文香
「物語論でいうところの、宝とはすなわち財宝ではない……。というものでしょうか。手に入れたのは、それぞれなりの成長……。」

飛鳥
「それって、つまり自己満足だろう。」

周子
「だねー。壮大な自己満足だったかもしれないけどさ。ファンもプロデューサーさんも喜んでたら、オールOKって感じじゃない?」

ありす
「いいと思います。とても、楽しかったですから。少しだけ、主義の違いで争いはしましたけど。」

飛鳥
「それもふまえて、いいイベントだったよ。」

周子
「つまり、いいイベントでしたーってことで。えーと、奏ちゃん、こういうとき最後のいい感じな一言ってなに言ったらいいの? ちょっと困ってるんだけど?」


「お好きにどうぞ♪」

周子
「えー、じゃあ……お疲れさまでしたー! よく分かんないので終わりー!」

飛鳥
「フム……お疲れさま、かな。」

ありす
「えっ、あっ、お疲れさまでした!」


「まぁ、ここは次の課題ね。お疲れさま。」

文香
「お疲れさまでした、周子さん。」

周子
「はー、終わったー。……あ。打ち上げは、後日、あらためてプロデューサーが遊園地に連れてってくれるってことで! 以上!」

飛鳥
「……悪くない。」

ありす
「やった!」


「ふふっ。」

文香
「楽しみです。」

周子
「疲れたー。もう2度とリーダーなんか、やらないからねー。でも……ま、楽しかったけど♪」

  • 最終更新: 2018/10/21 15:53
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