メモリアルコミュ

──街角

周子
「…………。」

[声をかける]

周子
「はぁ…………。」

[強く声をかける]

周子
「うわっ、びっくりしたー。あ、お客さんか……。サボってて、ごめんごめん。中にどうぞ。和菓子ならいろいろあるよ。見てって。」

[じっと見る]

周子
「……いやいや、あたしじゃなくてね? ふふふっ、面白い人やなー。アンタ、何なん?」

[スカウトする]

周子
「……アイドルのプロデューサー? へぇ、オーディションがあるんだ。それに参加してほしいと……。ふうん。たしかにシューコちゃんといや、看板娘で有名だけど……。べつにあたしじゃなくてもよかったんじゃない? なんであたし?」

[寂しそうだったから]

周子
「……寂しそう? ふーん……変なこと言うね。ま、名刺は受け取っておいてあげる。オーディションは……気が向いたらね。今日はお土産買って帰りなよ。じゃー。」

──数日後

周子
「へえ、ここがオーディション会場かぁ。どーも。あたし、シューコね。覚えてる? いやー、あのときはアイドルになるつもりなかったんだけど、アレからいろいろあってさ。実家から追い出されちゃったら、仕方ないよねー。ま、成り行きってヤツでさ。とりあえずよろしくね。プロデューサー。」

──レッスンルーム

周子
「ふ~……。ダンスレッスンってこんなに大変なんだ。さすがアイドル、キッツイわ~……。もうちょっとイケるかと思ったんだけどな~。」

[P]P
「お疲れ様でした。」

周子
「うん、ありがとー。いやー、あたしの身体、結構なまってるかも。ヤバいかもね。実家じゃ店の手伝いくらいしかしてなかったし……。手伝いっていってもたまに店番するくらいだったし……。そりゃ、身体もなまるかー……。いま考えたら、働かないでダラダラしてただけだな……。そんな娘じゃ、追い出されても仕方ないか~。」

[P]P
「ご両親と仲が悪かった?」

周子
「んー……べつに悪くないよ。フツー? 追い出されたっていっても勘当ってほどじゃなくてさ。働かない娘に食わせる八つ橋は無い! ……的な? そうまでいわれたら自立するしかないじゃん? ここなら寮もあるし、渡りに船って感じで助かったよ。親と話さないで、急に決めたけどね。そーそー、だからこないだ、『アイドルになるためにレッスンしてる』って、両親に連絡したんだ。そしたら、『ちゃんとやれ』って言われちゃってさ。なんか調子狂うよねー。……あたしが何かに打ち込んでるのが嬉しいんかな。あたし、今までテキトーに生きてきたから両親の気持ちも、まぁ、わからんでもないけどさ。……でもさ。これでもし、もしもだよ。ちゃんとアイドルになれたらさ。両親に見せてあげたいって思ってんのよ。ファンに見てもらいたいのはもちろんだけどさ。あと、プロデューサーもね。そこは、まぁ、拾ってもらった恩もあるし。……なんか、こーゆー湿っぽいのあたしっぽくないなー。よし、おしまいおしまい! ねっ!」

[P]P
「これから頑張りましょう。」

周子
「はいはい、わかったわかった。いいから、ご飯食べてかえろ! どっか連れてってー!」

──撮影スタジオ

周子
「宣材写真の撮影か~。まあ、これでも見た目は結構いいらしいしにこにこしとけば何とかなるっしょ♪じゃあ、さっさと済ませて帰ってくるから~♪日本茶でも飲みながらそこで見てて~!」

(撮影が始まった……)

カメラマン
「撮っていくねー!」

周子
「どーもどーもー。」

カメラマン
「はい、もっと笑ってー!」

周子
「ほいほいっ。」

カメラマン
「はい、ここで爆笑してー!」

周子
「えー。そら無理やわー。うち京女やからー。」

(要領よくこなしていく……)

──撮影後

周子
「は~、ほっぺたいた~い。一生分くらい写真撮った気がするわ……。いざ笑えって言われるとうまく笑えないもんだねー。余裕でできると思ってたんだけどなー。まさか、愛想笑いを見抜かれるとは。なかなかやるわー。さすが業界人。」

[変わったね]

周子
「……変わった? ん~、そうかな。あたしの場合、ガンバロー、とか、ダレニモマケナイ! みたいにはならないんだけど。多少めんどくさくなって、アイドルやめたいな~って思うことはあっても次の日にはちゃんとレッスンしに事務所に来てる。そういう意味では、変わったかも。それってあたしにとっては結構すごいことなんだよね。」

[すごいこと?]

周子
「そ。すごいこと。あたしってさ、気軽で身軽なのが好きなんだよね。重たいのとか、めんどくさいのとか、嫌いなんだ。けど、まぁ、ここの事務所にいると、それも悪くないかなって思うわけ。それってすごいじゃん? なにより、そういうのを分かってるプロデューサーと仕事すんのは……楽だし、居心地いいよ。アイドルに向いてるのかはまだわかんないけどあたしはこんなふうに楽しく生きてられるだけで今は十分かなって。ま、ここからあたしが成長するのはプロデューサーの力が必要だし、しっかり頑張って……うーん、ちょっと違うかな。ええっと……。あたしもそこそこに頑張るからさ……ま、よろしくってこと。プロデューサー。」

──レッスンルーム

周子
「ほい、これでレッスンおさめと。明日は、いよいよデビューLIVEかー。」

[緊張してる?]

周子
「んー、必要以上にはとくに。やることはやったし、やってないことはできない。それだけだよね。ま、嫌がっても待ち望んでも、起きても寝てても、そのうち明日は来るわけだし。なら、あたしは、迎えるだけかなー。」

──LIVE当日

周子
「ここが……ステージかぁ……。なんか……見たことない場所だね、ここ……。お客さんが、あんなにいるんだ……。でも、和菓子屋に来るお客さんとは違う……。まるで、熱に浮かされたってゆーか。」

[どうかした?]

周子
「どうもしないけど……。ただ、なんとなく落ち着かない……。なんて言ったっけ……この感覚。この先の一線を越えたら、どっかに迷い込んじゃいそうな。逢魔が時……だっけ。」

スタッフ
「塩見さーん、そろそろ本番です。準備してください!」

周子
「あ、はーい。そんじゃプロデューサーさん、とりあえず、歌ってきますわー。これが今生の別れになったりして。そんなわけないか。あははー……。」

[行ってらっしゃい]

周子
「え? あ、うん……? あぁ、そっか。あたし、行ってくるんだね。ここから、あの知らない場所へ。……んじゃ、行ってきますわ。一度行ったら、どんなあたしになるかわからないけど、戻ってきたとき、驚かないでねー」


周子
「どうも、塩見周子でーす。アイドルってことなんだけど、まあ、その前に、あたしはあたしなんだけど。ここ、やけに熱くて、まぶしくて……よくわかんないや。とにかく、お手柔らかに。そんじゃ……いこかー。」

──イベント終了後

周子
「……はぁ。」

[お帰り]

周子
「あ、うん。お疲れさん。」

[お帰り]

周子
「あぁ……そっか。ただ……いま。そっか、ただいまか……。あたし、帰ってきたんだ。なんだろう、この感覚……。ま、いいか。」


周子
「ふー、つかれた。いやー、事務所戻ってきたねー。お茶淹れる? 落ち着きたいよねー。おなかすいたしさー。」

[お帰り]

周子
「って、なんで、また言うん? あ、ツッコミ待ちか。一緒に出かけてたのに、おかしいやないかーい!」

[じゃなくって]

周子
「……って、あ、そっか。そういうことか。ここから出発して、帰ってきた、ってことだよね。なるほどね。ステージに出て、帰って……そっか。あたしさ……これからも、アイドルを続けてたらいろんなステージに出かけることになるだろうけど、それでも……ここへ帰ってくるね。」

[うん?]

周子
「考えたらあたし、今まで、のっぺりと暮らしててさ。実家のまわりから、あんまり離れたこともないし、ぶらっと外へ出て、ぶらっと戻ってきたりしてさ。」

[???]

周子
「あー、意味は、わかんなくていいよ。あたしにも、よくわかんないし、説明するのもめんどいし! ただ……。いい言葉だなと思ってさ。」

周子
「……ただいま。」

  • 最終更新: 2018/11/15 19:24
  • by Bobbie Bobrow